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膠原病・リウマチ内科

関節リウマチの診療

リウマチ専門医資格を持つ医師3名で診療にあたっています。
関節リウマチに対する最善治療を常に提供できるように努めています。
生物学的製剤及びJAK阻害薬も当院で使用可能であり、豊富な使用経験があります。

 

膠原病診療

膠原病は全身疾患であり、糸球体腎炎、間質性肺炎などの膠原病の合併症に関しても、統合的に専門的な治療を当科で行います。
免疫抑制剤や生物学的製剤などで新しい治療薬も積極的に使用しております。

対象疾患・専門分野
  • 全身性エリテマトーデスおよびループス腎炎、抗リン脂質抗体症候群
  • シェーグレン症候群、IgG4関連疾患
  • 関節リウマチ、若年性関節リウマチ
  • 乾癬性関節炎
  • 強直性脊椎炎
  • 皮膚筋炎・多発性筋炎および間質性肺炎
  • 全身性硬化症および肺高血圧症
  • 混合性結合組織疾患
  • べーチェット病
  • 血管炎(高安病、側頭動脈炎、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎、ウェゲナー肉芽腫症)
  • リウマチ性多発筋痛症、RS3PE、サルコイドーシス、再発性多発軟骨炎、回帰性リウマチ
  • 成人スチル病、不明熱、レイノー症状、関節炎、痛風、偽痛風、膠原病に伴う間質性肺炎
「膠原病」とは一つの病気を表しているわけではなく、免疫の異常から引き起こされると考えられている病気のいくつかを集めた総称です。
顕微鏡で見ると膠原線維に炎症を起こしていることが多いので「膠原病」という名前が付きました。
最近は「結合組織病」、「リウマチ性疾患」ともいいます。また、免疫の異常すなわち自分自身の体に対する免疫が起こってしまい「膠原病」になることもわかってきたので、「自己免疫疾患」とも呼ばれますが、はっきりとした原因はまだわかっていません。
広い意味では関節リウマチも膠原病に含まれます。
リウマチ・膠原病は全身疾患であり肺・心臓・腎臓・眼・皮膚など全身の臓器に障害を来たす場合もあります。
その場合は該当科と協力しながら治療することができます。
しかし、非常に難治性の病態や特殊な治療が必要な場合は九州大学病院や福岡大学病院などに治療を依頼しています。
今後も看護師、薬剤師と連携したチーム医療を推進し、リウマチ・膠原病診療を提供するクリニックとして患者さんに満足していただける治療が提供できるように努力したいと思っています。

 

自己免疫疾患と関節リウマチ

生体には有害な異物や細菌、ウイルスなど自分の体には存在しないものが侵入すると、これを認識して、その侵入者を攻撃して排除する防衛網が備わっています。
この仕組みを免疫と呼びます。
すなわち免疫にとって最も重要なことは自分(自己;味方)と自分以外(非自己;敵)を見分けることにあります。
しかし時にこの最も重要な自己-非自己の見分けがつかなくなり、自分自身の体に向かって免疫が攻撃を仕掛けてしまうことがあり、これらの病気を自己免疫疾患といいます。
自己免疫疾患には大きく分けて、全身にいろいろな症状が現れ、一定の臓器に決まっていない臓器非特異的(全身性)自己免疫疾患と、ある臓器に限って症状が現れる臓器特異的自己免疫疾患の2つがあります。
前者は関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどが、後者には慢性甲状腺炎(橋本病)などが存在します。
自己免疫疾患の一つの特徴として自分の細胞ないし組織に対して産生される自己抗体が認められます。
関節リウマチではRF(Rheumatoid factor;リウマトイド因子), 抗CCP(cyclic citrullinated peptide;環状シトルリン化ペプチド)抗体の2つの抗体が高頻度に検出され、いずれも病態との関連があると考えられており、診断においても重要な抗体です。

 

関節リウマチとは?

関節リウマチ(Rhumatoid Arthritis; RA)とは関節の滑膜という部位を中心に炎症(関節炎もしくは滑膜炎と呼びます)が起こる慢性の炎症性疾患です。
関節炎が進行しますと、関節の構造物である軟骨・骨が破壊、腱が変性・断裂してしまい、関節機能低下、更には日常労作(activity of daily life: ADL)の障害、ひいては生活の質(quality of life: QOL)の低下が起こります。
これが関節リウマチの自然経過です。
関節リウマチの発症頻度は人口の0.5-1.0%といわれ、決して稀な病気ではありません。
発症には遺伝因子、環境因子が複雑に関与していると考えられていますが、未だ不明な点が多いのが現状です。
遺伝的要因を示唆するひとつの証明として疾患の多発家系が存在することや一卵性双生児における発症の一致率の高さなどが挙げられます。
環境因子としては喫煙の関与は明らかで、細菌やウイルス感染などの感染症の関与も指摘されています。
関節リウマチの病因には特定の遺伝的背景をもつ方に環境要因が加わって発症する、遺伝-環境因子の相互作用が重要な役割を果たしていると考えられています。

 

関節リウマチにおける早期診断・治療の重要性

関節リウマチとは先ほど述べたように関節炎に続いて、関節破壊・変形が起こる病気ですが、以前はこれらの破壊・変形は10年以上の長い経過でゆっくりと進行してくると考えられてきました。
しかし最近の画像診断の進歩により、関節破壊は発症して1年以内という超早期に最も進行が顕著であることが分かってきました。
これまでは1987年に作成されたアメリカリウマチ学会(ACR)関節リウマチ分類基準が用いられてきましたが、この分類基準を用いますと診断確定までに症状が出現して平均約1~3.5年と時間がかかってしまい診断された段階で関節の破壊が進行してしまっていました。
また近年の関節リウマチ治療薬の進歩に伴い、早期に診断し、早期から抗リウマチ薬による治療を開始したほうがその後の関節予後(関節の変形の経過)が良いことが多くの研究で示されました。
これらのことから2010年新たな分類基準が作成され、現在は早期診断・早期治療が行われるように取り組んでいます。

 

関節リウマチの治療

従来の関節リウマチ治療は臨床症状の軽減とADLの改善を目標とし、症状の緩和のために痛み止めからスタートし、効果が無ければ金剤(シオゾールというお薬で現在はあまり使いません)などの抗リウマチ薬(disease modifying anti-rheumatic drugs;DMARDs)を使用するという治療法(ピラミッド療法;マイルドな治療から開始して、徐々に強い薬を追加していく方法)が行われてきました。

また、効果不十分な場合には、特に我が国ではステロイドが頻用されてきました。
しかし、このような緩徐かつマイルドな治療方法では早期のおける強い関節破壊を阻止することはできず、さらに感染症や心血管合併症などの併発によって、生命予後も一般の方と比較して約10年短いということが明らかとなりました。
このことから現在の治療の定番の考え方は、早期より寛解(永続的であるか一時的であるかは問わず、病気による症状が好転、またはほぼ消失し、臨床的にコントロールされている状態のこと)を目指してメトトレキサート(methotrexate;MTX)という内服薬を第一選択薬として使用し、それでも効果不十分な場合にはその他の既存の抗リウマチ薬の内服、もしくは点滴・皮下注射で投与する生物学的製剤(bDMARDs)を併用する積極的治療(逆ピラミッド療法)となっています。
このことにより関節リウマチの寛解導入率は飛躍的に改善し、関節破壊の阻止も可能となりました。
現在では、関節リウマチにおいては、関節破壊の進行を阻止のみならず、関節機能を正常化も達成可能であることが分かっています。

 

関節リウマチ治療における現代の考え方

関節リウマチとは関節の滑膜という部位に炎症が起こる滑膜炎を首座とする疾患ですが、この炎症を引き起こしているのは免疫担当細胞であり、これらの細胞から産生される炎症性サイトカインと呼ばれるタンパク質です。

2000年以降、これらの炎症性サイトカインをターゲットとする薬剤が研究・開発され、リウマチの治療成績は劇的に改善しました。
関節リウマチの病態に深く関与する炎症性サイトカインとして最初に治療標的となったのはTNF(tumor necrosis factor;腫瘍壊死因子)です。
このTNFを抑える薬の成功により関節リウマチ治療は大きく考え方を変換させることになりました。
さらにTNFと同様に炎症性サイトカインであるIL-6(interleukin;インターロイキン)を抑える薬も開発され、大きな効果をもたらしています。
これらの薬を総称して生物学的製剤といい、我が国では現在8種類が承認されています。
このように生物学的製剤の登場が関節リウマチの治療体系を大きく変貌させてきたことは疑いのない事実ですが、まだ解決できていない問題点も多数残されています。
生物学的製剤は正常な免疫反応でもあるTNFやIL-6などを抑えることになりますので、当然、通常は正常な免疫反応により抑えられている感染症や悪性疾患(癌)のリスクが増加する可能性があります。
感染症についてはこれまでの報告で生物学的製剤の使用により増加することが証明されています。
感染症の種類としては肺炎や気管支炎など呼吸器感染症が最も多く、その他、皮膚、軟部組織、尿路の感染症も増加します。
またそれ以外にも潜伏感染症である結核や日和見感染症(正常な免疫能を持っている患者さんでは問題にならないが、免疫が低下している患者さんで発症してくる感染症)が増加することも報告されています。
悪性疾患についてはこれまでは生物学的製剤を使用したことにより増加するといった報告はありませんが、現在悪性疾患に罹患している、もしくは発症して5年以内の患者さんにとっては非常にリスクが高い可能性が考えられます。
したがって治療開始前にはこれらの感染症や悪性疾患が存在しないことを確認する必要があります。
また生物学的製剤はバイオテクノロジーを駆使した製造過程を経て作られる薬であり、製剤コストが高く、それが薬価に反映されているため非常に高価であり、関節リウマチが慢性疾患であることから長期間にわたり高額な薬剤費が関わってくる可能性があります。
(指定難病と認定された方は、都道府県から医療費の助成を受けることができます。)
また生物学的製剤をいつまで投与が必要であるかについても、最近の研究にて一部の患者さんでは中止できることは分かっていますが、その頻度は決して多くなく、またどのような患者さんで中止することができるかについてもはっきりとした結論は出ていません。
さらに生物学的製剤治療により飛躍的に治療成績は改善しましたが、それでも3割の患者さんには効果がありません。
しかし生物学的製剤は発症早期であれば早期であるほど効果が高いことが証明されており、治療効果の点からも早期診断が重要なのです。
ぜひ疑わしい症状(朝(起床時)のこわばりが続く、多関節に腫れと痛みを伴うなど)がありましたらご相談ください。

 
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